猫の耳腫瘍~原因・症状と対策

猫の耳腫瘍は、耳の先や外耳道でよく見られます。耳の先には「扁平上皮ガン」ができやすく、耳に皮膚炎のような症状が現れます。一方、外耳道には「耳垢腺腫」もしくは「耳垢腺ガン」ができることがあり、耳の中にイボのようなものが発生します。どちらも放置すると耳が削れて失われたり、内耳が障害されて神経症状が現れたりするため、早期発見・早期治療が大切です。

原因

猫の耳腫瘍は、人間でいう耳たぶ(耳介)の先の部分と、耳の中をのぞくと見える部分(外耳道)に発生することがあります。原因はできる場所によって異なりますので、それぞれご説明します。

耳介の腫瘍「扁平上皮ガン」の原因

耳介にできやすい腫瘍は扁平上皮ガンです。扁平上皮ガンは、皮膚や口腔粘膜にできる悪性腫瘍で、猫だと耳の先や鼻にできることがあります。

主な原因は太陽の紫外線と考えられています。まず被毛が薄い耳や鼻が、紫外線の刺激によって日光皮膚炎を起こし、そのあとも同じ部分が紫外線の刺激にさらされ続けることで、扁平上皮細胞がガン化することがあります。

特に白っぽい猫は注意が必要です。紫外線から身を守るメラニン色素が少ないため、紫外線の悪影響を受けやすく、日光皮膚炎や扁平上皮ガンになるリスクが高まります。

外耳道の腫瘍「耳垢腺腫」「耳垢腺ガン」の原因

続いて外耳道にできる腫瘍について触れていきます。外耳道には耳垢腺という汗腺が分布しており、それが腫瘍化してイボのようなできものを作ります。良性の場合は耳垢腺腫、悪性の場合は耳垢腺ガンと呼ばれています。耳垢腺が腫瘍化する原因は特定されていませんが、外耳炎による慢性的な炎症が一因だと考えられています。

イボは見た目が様々で、色も形も猫によって異なります。ただし性質は変わらず、大きくなって耳の穴を塞いでしまったり、耳の奥に進行して鼓膜の向こう側にある中耳や内耳、さらにリンパ節を侵したりすることもあります。概ね片方の耳だけに症状が出ますが、まれに両耳に発症することもあります。

なお、扁平上皮ガン、耳垢腺腫、耳垢腺ガンは、いずれも高齢猫での発症が多い病気です。そのため、免疫力の低下が発症に関与している可能性もあります。

症状

耳介の腫瘍と外耳道の腫瘍に分けて、それぞれ症状をご説明します。

耳介の腫瘍「扁平上皮ガン」の症状

猫の耳介に扁平上皮ガンができると、耳の先に以下のような初期症状が見られます。

  • 皮膚がカサついている
  • 脱毛している
  • すり傷のようなものができている
  • かさぶたができる

初期の段階では、一見、耳にすり傷ができているようにしか見えないため、いずれ治ると踏んで放置しがちです。かさぶたはできてははがれ、またできて…を繰り返し、やがて耳に次のような症状が現れます。

  • 潰瘍ができる
  • 出血する
  • 膿が出る

さらに進行すると、耳の先がどんどん削れて失われ、顔面に影響が及ぶこともあります。

外耳道の腫瘍「耳垢腺腫」「耳垢腺ガン」の症状

耳垢腺腫もしくは耳垢腺ガンでは、外耳炎とよく似た症状が見られます。

  • 耳を気にして引っかく
  • 耳から悪臭がする
  • 耳だれ
  • 出血

痛みやかゆみが出るため、猫は気にして後ろ足で耳をかいたり、壁などに耳を押し付けたりします。耳垢腺の出す分泌物の中で細菌などが大量に繁殖し、悪臭を放つこともあります。

また、イボが外耳道から中耳、さらに内耳に達することもあります。内耳は三半規管、前庭部、蝸牛から構成され、聴覚や平衡感覚を司る非常に大切な器官です。そのうち、前庭部が腫瘍の影響を受けると、首がねじれたり(捻転斜頸)、ねじれた方向に体が旋回したり、うまく歩けなくなるといった前庭障害が現れます。

さらに眼球が勝手に動いてしまう眼振や、瞳孔が縮んで眼球が奥に入り、瞬膜が飛び出るホルネル症候群といった神経症状が起きることもあります。

対策

猫の耳腫瘍は種類によって治療法が異なります。ただ、耳の近くに顔面神経がある関係で、外科治療は極めて慎重に行わなければならないという点は共通しています。耳介の腫瘍と外耳道の腫瘍について、それぞれ治療法と予防法をご説明します。

耳介の腫瘍「扁平上皮ガン」の対策

耳介の扁平上皮ガンの場合、外科手術で患部を広範囲に切除します。放射線治療を行ったり、ガン細胞の増殖を抑える分子標的薬を使ったりすることもあります。

耳介などの皮膚の扁平上皮ガンは、紫外線が大きく関係しているため、猫を日光に長時間あたらせないようにしましょう。もし白っぽい猫が、外出や窓辺での日光浴を欠かさない場合は、ペット用の日焼け止めを活用するのも一つの手です。被毛が薄い部分に塗りましょう。

外耳道の腫瘍「耳垢腺腫」「耳垢腺ガン」の対策

外耳道の耳垢腺腫や耳垢腺ガンの場合、外科手術で耳道をすべて摘出します。場合によって中耳の鼓室包切開術や放射線治療を併用することもあります。また、手術が難しい場合にも、放射線による緩和治療を行います。

耳垢腺腫や耳垢腺ガンは外耳炎による慢性的な炎症が原因の一つと考えられているため、猫が外耳炎を発症したら、必ず完治させて長引かせないことが大切です。また、高齢になると発症しやすいため、定期的に動物病院で耳の検査を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。

いつまでも治らない傷は異常のサイン

「耳介のすり傷がいつまでも治らない」、「耳の中にできたイボのようなものがずっと引っ込まない」。それらは耳の異常を知らせるサインです。放置するとどんどん症状が進行し、扁平上皮ガンなら耳が削れて失われたり、耳垢腺ガンなら耳がひどい悪臭を放ち、耳だれが起き、前庭障害や神経症状が現れたりすることもあります。

もし猫に治りにくい傷やイボといった気になる症状を見つけたら、なるべく早く動物病院で受診してください。